自然はときに、実にドラマチックな現象を引き起こします。
世界の海で見られる「湧昇」もそのひとつ。
下層の海水が湧き上がってくる現象ですが、通常、上層と下層の海水は塩分濃度や温度など、いろいろな条件が異なるため互いに混じり合うことはありません。
それが、特定方向への風が海面を強く吹き付けるといった条件が重なると発生し、興味深い現象を引き起こすのです。
湧昇が発生する地域はいくつかあり、それらは好漁場としても知られます。
湧昇によって上下層の海水が混じり合い、下層に多く含まれる「栄養塩」が上昇することで植物プランクトンが発生。
それを捕食する魚などによる食物連鎖が築かれ、豊かな生態系が生まれるためです。
ペルー沖やカリフォルニア沖、モロッコ沖などが知られ、地域に多くの恵みをもたらしています。
こうしたダイナミックな現象は、世界の海域ならでは。
その認識に間違いはないですが、それに近いことが日本の内陸部でも起こっているのです。
それが、日本一の面積を誇る琵琶湖です。
琵琶湖は古くから「淡海(おうみ)」と称されるほど、大きな湖。
その名前の通り、まるで海のような「水理現象」と呼ばれる自然現象が発生します。
吹き付ける風などによって潮の流れのような湖流が生じたり、湧昇による水の上下層のアップダウンも起こります。
琵琶湖は、気温が下がる季節になると、湖の上層から下層に向かって湖水の混合が進む「全層循環」が発生。
この循環は、琵琶湖の水質や適切な生態系を維持するのに役立っていると考えられています。
こうした湧昇の循環メカニズムを、閉鎖水域の水質改善に応用したのが当社の「湧昇流循環装置(カルチファン)」です。
水面でファンを回転させて、縦方向への水の流れを人工的に発生させます。湧昇現象のような状態をつくりだし、水域全体の水質の一様化を図ります。
それにより水質は改善されて適度な水辺環境が保たれ、多様で健全な生態系を生み出すことができるのです。